(写真提供◎photo AC)
災害や事故、介護や相続など、人生には不測のトラブルや、避けられない困難が訪れます。とはいえ、気軽に聞ける弁護士や税理士が身近にいるとは限りません。専門的な知識を得ることで、冷静な判断で被害を減らしたり、計画的に備えたりすることができます。ジャーナリストとして長年さまざまな現場を取材しているファイナンシャルプランナーの鬼塚眞子さんに、暮らしに役立つ豆知識を聞きました。第12回は「おひとりさまの死後について」です。

前回 「介護破産を防ぐには? 介護施設に入っても、料金滞納で介護保険に空白が起こるケースが。施設料以外の費用の見積もりは慎重に」はこちら

目次
「おひとりさま」とはどういうことか
  ◆実例 「おひとりさま」=天涯孤独ではない
おひとりさまの死後、起こるトラブル
  1. 火葬
   ◆実例 親族の受け入れがある場合
  2. 借金
   ◆実例 親族の受け入れがない場合
● 相続の期限は決まっていない

「おひとりさま」とはどういうことか

総務省の調べによると、おひとりさま世帯が増えて、特に65歳以上の単身世帯の増加が顕著です。2040年には単身世帯は約40%に達する見込みだそうです。

単独世帯率の推移と65歳以上の単独世帯数の推移(2020年以降は予測)出典:総務省

「おとりさま」とはどういうことか、〈資産〉を切り口に、資産がある方と無い方に分けて、実例を見ながら検証します。

今回は、資産がないおひとりさまにスポットを当ててみます。

 

◆実例 「おひとりさま」=天涯孤独ではない

高齢のA子さんは「私は〈おひとりさま〉で、身寄りがいないんです」とかかりつけの病院に話していました。実際、A子さんはひとり暮らしで、結婚歴も出産経験もない〈おひとりさま〉でした。

そんなA子さんが手術をすることになり、手術の説明日に中年の女性を伴って病院に現れました。驚いたのは医師の方です。医師は身寄りがいないというA子さんのために、A子さんの手術中やその後にもしものことがあった場合を考えて、病院の社会福祉士や行政の福祉担当者とも連携を取っていたのです。この日も病院内の社会福祉士に同席してもらう手配をして、今後の相談をA子さんとする予定を立てていました。

A子さんが連れてきたのは姪でした。実はA子さんは兄や弟も生存し、甥や姪も複数いたのです。「身寄りがないと言ったじゃないか!」と言う医師に、「世話になることを当てにしていませんから」としれっと答えるA子さん。医師は絶句したといいます。

子どものいない〈おひとりさま〉は、身寄りがないと勘違いをする方が実に多いように感じています。

おひとりさまとは、独身や配偶者との死別・離別を理由にひとりで暮らしている人を意味しますが、天涯孤独は親もきょうだいも親戚など身寄りがまったくない人のことです。つまり、おひとりさま=天涯孤独ではないのです。

A子さんの「親族に頼らない」という気持ちは痛いほど理解できますが、親族がいるのに天涯孤独と申告することは、治療を受ける場合や相続の際には大きな問題となります。