傷つきながらの頭フル回転はうまくいかない

わたしは傷つきながら先輩に感謝した。二度といじらないでほしい、と思いながら言った。

「またお願いします」。

わたしは、わたしを愛情をもっていじってくださる先輩が好きだった。しかし、そのいじり方はすべてが嬉しいものではなかった。だけど、あれはやめてほしいんです、これも傷つきますので、とは言えなかった。

『厄介なオンナ』(著:青木さやか/大和書房)

せめて好きな先輩には、扱いづらいと思われたくなかった。扱いやすい女芸人でいたかった。

あれから20年近く経って、誰もわたしをおばさんと呼ばなくなった。本当におばさんになると、おばさんとはいじられないようだ。

容姿についても、何も言われなくなった。いや、時折ある。男芸人に容姿をいじられること。

時代に逆行している、むしろ攻めてるなぁと感じながら、そして懐かしい気持ちもありながら、結局あまりいい気持ちはしないし、いまはそのいじりに、そこまで乗っからないようにしている。

嫌なことは嬉しそうにしないようにしよう、だけど、その場が白けないように、嫌だという気持ちを持ちながらの“返し”をしてみるが、だいたいにおいて白ける。傷つきながらの頭フル回転は、疲れるわりにうまくいかない。