「人に会わず、写真も撮らせず、洋館で夜な夜なパーティを開くという。まるでドラキュラ伯爵のような方かと(笑)」(近藤さん・左)/「それはいいですね。ドラキュラかもしれないよ」(宇能さん・右)
1970年代に官能小説で一世を風靡した作家・宇能鴻一郎さんは取材嫌いで知られ、実像は謎に包まれてきた。2006年の小説連載終了後、長く沈黙を保っていたが、21年に復刊された純文学短篇集が話題を呼び再ブームに。宇能作品をこよなく愛する近藤サトさんが宇能さんの邸宅を訪ねると…。今年から月刊化し大好評発売中の『婦人公論』4月号より特別に記事を公開します(構成=山田真理 撮影=宮崎貢司)

<前編よりつづく

ドラキュラ伯爵かルートヴィッヒ2世か

近藤 宇能先生は、最近になって「鯨神」を含む短篇集(『姫君を喰う話』)が文庫化、再び注目されています。若い人や女性など新しい読者を獲得しておられるのが、長年のファンとして嬉しい限りです。

宇能 あんな変わった小説は売れっこないと思っていたのに、不思議と文学として皆さん楽しんでくれているという。ありがたいけど、まあ当たり前という気持ちもどこかにある。(笑)

近藤 そうなんですよ! 先生の作品の素晴らしさをどうしてみんなわかってくれないのと、ずっと思い続けてきました。

宇能 僕自身が面倒くさがりの人嫌いで、ごく最近まで文壇との付き合いや取材の類をいっさい受けなかったことも一因かもしれません。

近藤 私も今日お会いするまで、どんな怖い方だろうと思っていました。人に会わず、写真も撮らせず、洋館で夜な夜なパーティを開くという。まるでドラキュラ伯爵のような方かと。(笑)

宇能 それはいいですね。ドラキュラかもしれないよ。