少年時代、敗戦後の満州でパーティを垣間見たソ連軍司令官の邸宅が深く心に刻まれ、ボールルームに6本の円柱を配した

近藤 おモテになるのは、作家になってからですか。(笑)

宇能 とんでもない。小説やエッセイは、すべて体験から想像力を働かせて、針小棒大に書いているだけです。

近藤 ご趣味はほかにも?

宇能 高校時代からオペラが好きで、現在も月1回、ピアニストを呼んで歌っています。日本語で歌うと怒られてしまうから、ヴェルディの「リゴレット」もイタリア語で覚えて――お聞かせしましょうか?(「風の中の羽根のように」を朗々と歌う)

近藤 素晴らしい!

宇能 先日医者に行ったときも、「ちゃんと声が出ますか」などと失礼なことを聞くから一節歌って聞かせたら、「病院ではやめてくれ」と。(笑)

近藤 そういえば昨年は体調を崩されて、入院なさっていたとうかがいました。

宇能 横行結腸がんの手術をして、2週間ほど病院にいました。退院後に飲む生ビールだけを楽しみに退屈な入院生活を耐えていたのですが、医者は「酒を飲むな」と言うのです。しかし休診時間に覗いたら、その医者の灰皿が吸い殻でいっぱいでね(笑)。「なんだ、人には好きな物を禁止しといて」と憤慨して、僕も我慢するのはやめました。