老後のリスクと後見人契約
私たちが弁護士と任意後見契約を交わすことになった理由は、14年の出来事にさかのぼる。
「通い」仲間の1人が、2度目の入院・手術をすることになり、1度目のときと同様に、私が気軽に保証人を引き受けた。
彼女の手術の日、付き添って術後の説明を待っているとき、私の携帯電話がブルブル震えた。
それは、私が遠距離介護をしていた、東京のひとり身の叔母の容体が急変したとの知らせだった。私は急いで上京したが、叔母の臨終に間に合わなかった。
すぐに病院を出るか、とどまって説明を聞くか。「究極の選択」だった。めったにない偶然が、「近居」の課題を私たちに突きつけた。
おひとりさま同士、できる人がサポートするという前提でやってきたが、「どこまで」という線引きは考えていなかった。
高齢期の心配事は介護だけにとどまらない。入院時の保証人、受ける治療の方針決定、遺体の引き取り、葬儀や亡くなったあとの片付けなど、避けられない事態が待ち受けている。
家族や身寄りがいない高齢おひとりさまは、誰に頼めばいいのだろう――。