21年12月に銀座のギャラリーで行われたチャリティバザー。たくさんの作品が並べられた

手編みのすばらしさを後世に残したい

作品展開催を50年続け、2015年に幕を下ろした時、長男の学生時代の先輩(安倍紀明さん)から、「浩子さんの作品を本にして後世に残すべきだ」と強く勧められ、作品集の自主制作を決めた。

振り返ると、私の人生には節目節目で手を差し伸べてくださる方が現れるんです。「作品集なんて作らなくていいわよ」と最初は断っていたんですけど、今となっては作ってよかった。この作品集がきっかけになって、ヴィクトリア&アルバート博物館への収蔵が決まりましたので。

ここにもまた長い物語があるのですが――作品集がロンドンに住むイルゼ先生の息子さんのもとに届き、それをご覧になった彼が博物館に推薦してくださったのです。先生との70年以上の縁がこうして繋がりました。

ここまで長く編み物を続けられたのは、何よりも「編み物が大好き」という気持ちがあるからです。それに丈夫な体にも恵まれました。

運動習慣は、ゴルフくらいでしょうか。毎晩の水割りは欠かしませんが、今までお産と4年前に腸閉塞を患ったこと以外には、病院のお世話になったことがありません。もちろん年齢なりに息切れはしますけど、健康な体に産んでくれた両親には感謝しなければなりません。

今年卒寿を迎えますが、まだしばらくは作品を作ったり、教えたりして過ごしたいです。作品展を終えた後も、毎年、私や生徒さんの作品を集めたチャリティバザーを開催しています。

手間も時間もかかるけれど、手編みにしか出せない温かな風合いがあるのです。若い方たちにバザーで気軽に作品を手にしてもらい、その良さを少しでも知ってもらいたい。それが私の願いです。