格安シェアハウスでの生活は毎日がギスギス
しかし「夢見た」はずの大学生活は、「現実」の連続だった。
受かったはいいが入学金が払えない。なんとか借金して入学はできたが、次はPCが買えない、電子辞書が買えない、教科書が買えない。
地元にいた時は私服なんて一着持っているかどうかだった。勉強しかしない校風で、友達と遊ぶこともなかったし、あっても制服のままだった。
大学に入ったらいきなり毎日私服だ。それを揃えるだけのお金がなかった。
周囲は合格すると真っ先に一人暮らしの家を決めた。でも私はもちろんそんなお金はなかったので、ドミトリータイプの格安シェアハウスに入った。
シェアハウスと聞くと、ひょっとしたらキラキラした響きに感じる人もいるのかもしれない。(実際キラキラしたシェアハウスも実在はするだろうが)
私は18~25歳まで格安シェアハウスで過ごしたが、環境としてはかなり壮絶だった。
8畳ほどの部屋に6人くらいが布団を敷き詰めて雑魚寝する。
性格もこだわりも違うまったくの他人が、パーソナルな空間一切なしで暮らすとどうなるか。
修羅場もあるし、毎日とにかくギスギスしていた。
2つしかない勉強机は奪い合い。シャワーの時間が長い、寝ようとしたのに隣で電話をしている、トイレが詰まった、と次から次へと問題が起きた。そしてそのたびに犯人探しが始まり、「やったやってない」ですったもんだする。
そんな中でも、PCや服などを貸してくれる人もいて助けられたり、悪いことだけではなかったように思う。
しかし初めての夏が来て、大きな問題に直面する。
なんとエアコンがなかったのだ。
私の地元はどれだけ暑くても朝晩は気温が下がり、エアコンなしでも寝ることができる。でも、都会は違った。なんというか暑さの質が違う。
日中建物は熱せられ、その熱がたまって夜になっても全く冷えない。それどころか、こもった暑さでむしろ日中よりもむっとしている。うだるような暑さで、とてもではないが眠れない。
あまりに暑くてベランダに布団を出して寝ようと試みたこともある。扇風機は熱風をかき回すだけだ。
その頃の睡眠時間は1時間という日もあった。
だんだんと倦怠感が全身を包み、ぼーっとするようになった。身体に力が入らないのだ。