『孤独の哲学 「生きる勇気」を持つために』(著:岸見一郎/中公新書ラクレ)

プライベートの語源は「奪う」

しかし、コロナ禍のように会食そのものができなければ、断る理由を明らかにする必要はありません。感染症対策の一環で人と会うことが回避されれば、なぜ会わないのか理由を詮索されることもないでしょう。

断れない一番大きな理由としては、相手から嫌われたり、仲間外れにされたりする事態を恐れるからということがあります。そのため、仕方なく人と会っていた人もいるでしょう。そのような人であっても、「感染予防のために不要不急の外出を控えている」といえば、これは誰にも当てはまることなので、断っても相手と大きな摩擦は起こらなくなりました。

なぜ、断ることが必要なのか。英語のプライベート(private)の語源はラテン語のprivare ですが、その意味は「奪う」です。自分の時間を奪い取らなければ、プライベートな時間を持てないからです。

会うのを断った時の反応は相手によって違います。誰もがそのことで感情を害するわけではありません。「それなら、また別の時に会おう」という人もいれば、別の人と会う約束をする人もいます。だから、断ることを恐れなくてもいいのです。断ったからといって、誰もが怒るわけではなく、怒るような人と付き合う必要はないのです。