国の象徴からのお誘いを断った米人俳優

アメリカの俳優、ピーター・フォークが天皇から招待された時のエピソードを加藤周一が伝えています。彼は先約があると招待を断ったのです。

「私は先約の相手に、友人か恋人か、一人のアメリカ市民を想像する。もしその想像が正しければ、彼は一国の権力機構の象徴よりも、彼の小さな花を択んだのである」 (『小さな花』)

権力の側につくのか、市民や「小さな花」の側につくのか選択を迫られる機会が人生においてはあります。エラい人だからとか、また知り合っておくと得する人だからという理由で先約を反故にするような人は信用できません。

※本稿は、『孤独の哲学 「生きる勇気」を持つために』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


孤独の哲学 「生きる勇気」を持つために』(著:岸見一郎/中央公論新社)

孤独感や孤立とどう向き合うべきか? どうすれば克服できるのか?老いや死への恐れ、コロナ禍やSNSの誹謗中傷などますます生きづらくなる社会に、「救い」はあるのか?
著者はアドラー心理学を読み解く第一人者だが、NHKの「100分de名著」では三木清の『人生論ノート』やマルクス・アウレリウスの『自省録』を取り上げるなど、古今東西の哲学に詳しい。哲人たちの思索の上に、自らの育児、介護、教職経験を重ねて綴る人生論。