岸見一郎先生「コロナ禍において強制的に孤独となる世の中で、どう生きればいいのかを考えなければなりません」。(写真:中公新書ラクレ編集部)

新型コロナウイルスの感染拡大で、自由に外出することが難しくなり、生活の在り方が大きく変わりました。誰かに会いたいと思う人も、一人で過ごすことが好きな人も、孤独を感じる経験をしたのではないでしょうか。また「孤独」を強く感じる生活の中で、コロナ禍以前からあった対人関係――友人や職場、SNS、老後などの問題もより顕在化し始めています。上司から誘われた会食への参加など、仕方なく人と会っていた人も多いのではないでしょうか。大ベストセラー『嫌われる勇気』(古賀史健氏との共著)の著者・岸見一郎先生が教える「会いたくない人からの誘いを断ることの必要性」とは。

コロナ禍ではみんなが無条件に孤独になる

一人でいても孤独でない人もいます。二つの意味での孤独、人と関わって傷つくのを恐れるからでも、あるいは外では誰からも注目されないので家にいる方がむしろ孤独でないと考えているからでもありません。一人でいることを幸福と感じられるのです。

哲学者のパスカルは次のようにいっています。

「すべての人間の不幸はただ一つのことに由来する。部屋の中にじっととどまっていられないことだ」 (『パンセ』)

部屋の中にじっととどまっていられない人は、外で誰かと一緒に過ごしたら孤独ではないと感じるでしょうが、そのようなことは人間の不幸だとパスカルはいいます。誰かと一緒にいることが気晴らしになるという人は、他者に依存しています。

それゆえ、そのような人は他の人と自由に会えなくなれば、たちまち孤独になり、孤独であることを不幸だと思うでしょう。他方、他者に依存しない人は、一人でいても孤独ではなく、むしろ、一人でいることを幸福に感じられます。孤独であることを自分の意志で選んだのです。

しかし、コロナ禍では孤独を選択できません。人と会いたいと思っても会えないために孤独を感じるという場合、これはいわば強いられた孤独です。孤独を強いられた人は、孤独であることを望んでいません。コロナ禍では、そのような孤独の中でどう生きればいいのかを考えなければなりません。