新型コロナウイルスの感染拡大で、自由に外出することが難しくなり、生活の在り方が大きく変わりました。誰かに会いたいと思う人も、一人で過ごすことが好きな人も、「孤独」を感じる経験をしたのではないでしょうか。また「孤独」を強く感じる生活の中で、コロナ禍以前からあった対人関係――友人や職場、SNS、老後などの問題もより顕在化し始めています。そのような問題の解決策の一つとして、大ベストセラー『嫌われる勇気』(古賀史健氏との共著)の著者・岸見一郎先生が教える「ママ友や職場での対人関係など、友人ではないけれど、そっけない態度はできない相手との関わりかた」とは。
仕事と交友の線引きは?どこまで仲良くするべきか
孤独を感じるのは、何か対人関係の問題が起きて一人でいることを余儀なくされたためというケースがしばしばあります。それでも一人でいることが必ずしも孤独であるわけではなく、自分を理解してくれる真の仲間がいて、その人と結びついていると感じられれば、孤独ではなくなるとも考えられます。
今回は、友人ではないけれど、あまりにそっけない態度を取るわけにはいかないような相手との関係を例にあげながら、孤独との向き合い方を考えてみましょう。
職場での対人関係はその一つの例で、一緒に仕事をしているだけで親しくなる必要はないと思ってみても、誰とも口をきかないで黙々と仕事をすることは難しいでしょう。「愛想はいいけれども仕事ができない人」か、「愛想はよくないけれども仕事はできる人」か、どちらを採用するかという選択を迫られたら私は間違いなく後者だと思います。
もっとも、まわりに気を遣わせる人は厄介ですが、そうではなく、仕事に専念し、プライベートの付き合いを断る人がいれば、それを見て自分もそんなふうにできたらどれほど清々するだろうとうらやましく思う人もいるでしょう。
仕事と交友に厳格に線を引ける人は、たとえ職場で浮いてしまっても孤独を感じることはありませんが、それは難しいと感じる人は、上司も含め、まわりの人にそこそこ愛想よくしないといけないと思い、職場での孤立を恐れることでしょう。
それでも、仕事以外の面では、職場の人との距離を置こうと決心したとします。そのことで、仕事の場で多少不利な目に遭うことになろうとも、自分がどうするかを考えればいいことです。しかし、自分の決心が他の人にも影響を及ぼすかもしれないと思うと、決心は鈍ります。