『孤独の哲学 「生きる勇気」を持つために』(著:岸見一郎/中公新書ラクレ)

子どものために「ママ友」と付き合うべき?

「ママ友」といわれるような、子どもを介した親同士の付き合いは、その一つの例になります。相手の親と仲良くしたくなくても、子どものために親同士が付き合わなければならないと考える人がいます。親と付き合う必要はないと思ってみても、そのことで子どもが学校などで友だちの輪に入れなくなるのを恐れるからです。

子どもが誰と付き合うかは子どもの課題です。子どもが小さければ、親が他の子どもに「この子と遊んでやって」と頼めるかもしれませんが、うまくいかないケースは当然あります。幼い子ども同士であっても、気が合わないことがあるからです。

誰と仲良くするかは子どもが自分で決めることで、親の出る幕はありません。喧嘩をしたりして仲たがいをする時もありますが、それも親は解決できません。子どもが自分で解決するしかないのです。

しかし、もしも子どもの側から持ちかけられれば、親は相談に乗ることはできます。その場合も、親は自分の意見を伝えるだけであって、交友関係に口出しはできません。たずねられたことにしか答えないということです。

「友だちと喧嘩したけどどうしたらいいか」とたずねられたら、例えば、謝罪の手紙を書いてみたらと助言できますが、「そんな子と付き合うのはやめなさい」というようなことはいえません。

子どもが交友関係でつまずき、一人ぼっちになって寂しそうにしているとしても、相談してこない限り、子どもが自分で解決するのを親は見守るしかありません。学校で友だちともめて意気消沈している子どもに、何かあったのかと親は問い詰めてしまいますが、そんな対応をすれば、子どもは頑なになって親に何も話そうとしなくなります。