あらゆる悩みは対人関係の悩みである

対人関係の中で積極的にならないことには理由があります。それは対人関係の中に入っていかないためです。アドラーは「あらゆる悩みは対人関係の悩みである」といっています。人と関われば、何らかの摩擦が起きないわけにはいきません。そこで、傷つけられたくないと思って、対人関係の中に入っていこうとしない人がいても不思議ではありません。

そのような人に私は、「あなたは自分の言動が他の人にどう受け止められるかを意識できる人だと思う、だからこれまで少なくとも故意に人を傷つけるような言動をとったことはないのではないか」とたずねます。「少なくとも」といわなければならないのは、自分がそのつもりでなくても、誰かを傷つけるという可能性はありうるからです。こういうと、多くの人は同意します。

私は続けてこういいます。「あなたは自分のこと暗いというけれども、本当は『暗い』のではなく『優しい』のである」。このことも多くの人が同意します。かくて、自分を優しいと思えるようになった人は、前は自分が暗いことを理由に対人関係の中に入っていこうとしなかったでしょうが、今や優しい自分を受け入れることができたので、積極的ではないにしても、人と関わろうと思えるようになります。

もちろん、これは程度問題なので、人の気持ちがあまりにわかりすぎ、人を傷つけないでおこうと思う人は、いいたいことがあってもいえず、しなければならないことがあってもできません。そこで、これくらい相手の気持ちに配慮できる人に対して、自分の考えを思い切って伝えられるようになる援助をします。その話の中で、人から嫌われることを恐れてはいけないという話をするのです。