「笹餅の味を継承できればうれしい」と桑田さん。(今年2月17日撮影・写真提供=読売新聞社)
青森県・五所川原で、笹餅を作り続けている桑田ミサオさん。手作りの味が評判を呼び、75歳で一念発起して起業。津軽鉄道の車内で民謡を歌いながら販売したり、地元で講習会を開いたり、「餅ばあちゃん」として奮闘してきた人生を振り返る(構成=村瀬素子)

雪深い日も暑い日も笹餅に愛情を注いで

昨日の夜から雪がしんしんと降って、だいぶ積もってきました(2月下旬に取材)。機械(除雪車)が道路の雪を飛ばしてくれて、車は通れるようです。今年は例年の何倍もの積雪といわれてますけども、私は生まれたときから青森に住んでいますから、そんなに気にはなりません。

笹餅を作る加工所は自宅の敷地内にあり、母屋から10歩ぐらいで行けます。加工所に入るとすぐストーブのスイッチを、大中小の「小」で点火。小でも10℃以上になりますから、じゅうぶんあったかいです。

私が作る笹餅は、手間と時間がかかるんですよ。前の日に作ったこしあんと、もち粉、上白糖、塩を混ぜ、水を少しずつ加えてとろとろのやわらかい生地を作って、それを少なくとも1時間は寝かさねばだめだからね。そして蒸すのに1時間。

蒸し上がったら、親指と人差し指で輪を作って生地をちぎるんです。指の感覚で大きさはわかります、1つ40gぐらい。熱いですよ、手がまっ赤になる。手袋は、はきません(つけない)。粉の伸び方とかが、手だとちゃんとわかる。手がおいしくするんです。

指でちぎって丸めたお餅を、笹の葉で包んだら、また蒸し器に入れて1分ちょっと。こうすると、なめらかでやわらかいお餅になり、笹の葉の色も青々ときれいに仕上がるんです。これで1回80個作ります。

いままで週に2回、400個ずつスーパーに納めてきました。だから前日は、80個×5回繰り返します。朝6時から仕込みに入って、夜遅くまで、ほぼ立ちっぱなしです。全部一人でやってますから、笹餅を作らない日でも、もち米を製粉したり、こしあんを作ったり。6月から9月までは山さ入って笹の葉採りもする。こんな多忙な95歳、いますかね(笑)。

昨日も、「30分で完売したよ」とスーパーから電話があって、ありがたいことです。ただ、スーパーでの販売は、3月半ばで一区切りにします。