源義経の奥州落ちを題材とした絵巻『義経奥州落絵詞』。兄・頼朝と不和になった義経は、ここに描かれたような山伏姿で北陸道を下ったと言われる(「義経奥州落絵詞」一部。作者不詳、東京国立博物館所蔵、ColBase
小栗旬さん演じる北条義時、大泉洋さん演じる源頼朝ら、権力の座を巡る武士たちの駆け引きが三谷幸喜さんの脚本で巧みに描かれるNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(総合、日曜午後8時ほか)。5月29日放送の第21回「仏の眼差し」では、前話で義経(菅田将暉さん)を自害に追い込んだ藤原泰衡(山本浩司さん)に対して「義経をかくまった罪は反逆に勝る」と朝廷の静止を無視し、奥州攻めを進める頼朝の姿が描かれる予定だ。一方、源平の争いから鎌倉幕府誕生まで「合戦」を中心に歴史をひもとく本連載、その第五回は、兄・源頼朝と対立した義経が、奥州藤原氏に接近したのちに起きた奥州合戦について。

都落ちした源義経が、奥州平泉にたどりつくまで

壇ノ浦の戦い後、兄・頼朝と対立して都落ちした源義経が、奥州平泉にたどり着いたのは文治(ぶんじ)三年(1187)二月頃のことだった。

京を落ちた義経は九州で再起を図るため、摂津の大物浦(だいもつのうら)から船出したが嵐により遭難し、弁慶や静御前らと吉野に潜伏したのちに姿を消した。

その後、鞍馬や比叡山、興福寺など畿内周辺の寺院勢力を頼って転々とし、伊勢・美濃を経て奥州へ向かったようだ。

経路は不明だが、山伏姿で修験者の霊山が連なる北陸道を下った可能性が高い。