天下落居
全国の武士が動員されたこの戦いは、頼朝にとって、積年の脅威であった奥州藤原氏を滅ぼすと同時に、自身を武家の棟梁として全国の武士に認知させるデモンストレーションだったといわれている。
最大の特徴は、頼義が安倍氏を滅ぼした前九年合戦を模した点にある。合戦の軍旗から泰衡の梟首(きょうしゅ)の作法、厨川柵への進軍まで、頼義の故事に倣(なら)って再現されたのだ。
武士たちに頼義の軍功を追体験させ、源氏の正統としての自身の権威を確立するのが狙いだったといわれている。この戦いにより、挙兵以来十年に及ぶ内乱も集結し、「天下落居(てんからくきょ)」といわれる、つかの間の平和が到来するのである。