三谷が手掛けた作品から伝わる「大河ドラマ愛」

また、『新選組!』(2004年放送)、『真田丸』(NHK、2016年放送)、『鎌倉殿の13人』(2022年放送)と現在まで3作品の脚本を手掛けているNHKの大河ドラマを見ていても、三谷幸喜が大の歴史好き、そして大河ドラマ好きであることがよくわかる。

過去の大河ドラマのセリフを自分の脚本に盛り込んでみたり、演じる俳優が過去の大河ドラマ出演作で言ったセリフが繰り返されたりと、三谷の”大河ドラマ愛”が伝わってくるシーンは少なくない。

著書でふれている他の放送作家のことを思い出しても察しがつくように、放送作家というのは、「テレビっ子」がそのまま大人になってつく職業という側面が色濃くある。

そのなかでも、自分の見てきたテレビ番組へのこだわりの深さという点において、三谷幸喜は指折りの存在だろう。脚本家としても、そのテレビ愛はしっかり受け継がれている。

むろんそれがすべてではないにせよ、「テレビっ子」気質であることが前面に出ている点が彼の脚本の大きな特色だ。

※本稿は、『放送作家ほぼ全史―誰が日本のテレビを創ったのか』(星海社新書)の一部を再編集したものです。


放送作家ほぼ全史―誰が日本のテレビを創ったのか』(著:太田省一/星海社新書)

「青島幸男、秋元康、宮藤官九郎。この3人の共通点はなにか? そう聞かれて即座に答えが思い浮かぶひとはどれくらいいるだろうか? 答えは、みんな放送作家だったことである。青島幸男はタレント・政治家、秋元は作詞家・プロデューサー、宮藤は脚本家としてそれぞれひとつの時代をつくった人たちだが、それ以前に3人ともが放送作家であった」(「はじめに」より)。

テレビの裏方として企画・構成を考えたり台本を書いたり、あるいは脚本家・作詞家・小説家になったり…。テレビやメディアで活躍する「放送作家」という不思議な存在を日本のメディア文化、エンタメ、戦後日本社会との関係からとらえ直す画期的な一冊。