ADHDの特性、普通の仕事で活かせずともアートなら
会社を辞め、交付された障害者手帳を手にハローワークに足を運んだが、該当する求人の検索結果はたったの3件。30歳で貯金も底をつく状況で、仕事もせず一日中家にいるのは怖くて仕方がなかった。
「まずは自分と向き合おうと、自分ができないことを紙に書き出してみたんです。人に言われたことが一度で理解できない、まわりが見えない、要領が悪い、物事を順序立てて整理できない……。反対に、できることって何だろうと考えたときに出た答えは、〈一つのことに長時間集中できる〉だけでした」
ならばその強みを活かそうと思ったリトさんは、「自宅で一人でできる仕事」を模索するようになる。発端は、プリント用紙のすみっこに描いた緻密な落書きだった。
「ふと、これを大きな紙にぎっしり描いたら面白いんじゃないかと思い、その日のうちに色鉛筆とノートを買って描いてみたんです。それをツイッターに載せたら、すごい数の《いいね》をもらって。アートで食べていけるかどうかはさておき、自分の発達障害の特性を活かして『こんなことができました』という発信ができればと思ったんです」