「葉っぱのアクアリウム」SNSでの反響が大きかったリトさんの作品。一枚の葉っぱを舞台につくりあげる小さな世界
小さな一枚の葉の作品が「可愛い」「癒やされる」と話題になり、国内外にファンを広げている《葉っぱ切り絵アーティスト》のリトさん。逆境をきっかけに独自の世界を切り拓いてきた〈取材・文=上田恵子 撮影(人物)=小山志麻〉

葉っぱの上に広がる優しい物語

「今日は晴れて良かったです。やっぱり背景は青空がいいですよね」と言いながら、自身の作品を空にかざす。リトさんは、一枚の葉っぱの中に作品を描く《葉っぱ切り絵アーティスト》だ。ほぼ1日に1点のペースでツイッターやインスタグラムに上げられる作品には、クマやリス、クジラなど、さまざまな生き物が登場する。

自慢のツノを失ったサイを元気づける森の友人たち、落ち込んで涙をこぼすウサギにそっと花を差し出すハリネズミ……など、弱っている仲間に寄り添った作品も多い。作者のまなざしの優しさに、見る人は惹きつけられるのだろう。その世界観に魅了され、日本のみならず海外からもコメントが届く。昨年出版した作品集『いつでも君のそばにいる』も異例の売れ行きという。

「作品を一つアップしたら、次のテーマを考えています。本を読んだり、昔旅行した風景を思い出したり、葉っぱの形から想像をふくらませたり。この葉の上に何を表現できるかな、と想像するんです。何も浮かばないときはとりあえず紙にカエルやネズミの絵を描いてみて、そこから物語を組み立てていきます。バレンタインや卒業式など、季節ごとのイベントをテーマにすることも」

アトリエは、両親と暮らす自宅の自室。子どもの頃から使っている勉強机で黙々と作業をする。これまでにつくった作品は400点以上。早いものは1時間ほどで完成するが、なかには8時間以上かかるものもある。

「おそろいのもよう」