NHK時代とは全く異なる仕事内容ですが、利用者のために進むしかないと日々奮闘している内多さん(写真提供:『53歳の新人 NHKアナウンサーだった僕の転職』より)

現実には「お金の計算」で夢や希望に手を伸ばす

(3)は、お金にまつわる仕事です。開設以来、僕がやってきたことをひと言で言うとすれば、それは「お金の計算」ということになるかもしれません。そんなことを言うと夢も希望も無くなりますが、それが現実でしたし、それがなければ夢も希望も手が届かないのです。 

だから、寄付金を集めることは、至上命題でした。知り合いの企業が開くセミナーに招いてもらって寄付を呼び掛けたり、募金箱を置いてくれる場所を探して歩いたり、考えられることは片っ端から実行しました。 

コツコツと呼びかけを続け、マスコミを通じて支援を訴えてきた結果、今まで寄付をしてくださった方はおよそ1200人(2021年12月時点)に上っています。そのすべての方々にニュースレターを届けるため、「支援者リスト」の作成は欠かせません。

今は毎月毎月、200件を超える寄付が寄せられますが、その一人一人について、新規の方かどうかを確認し、新規であれば支援者リストに追加していく。これをずっと繰り返すのは、なかなか骨が折れる作業です。

でも、その作業が重ければ重いほど、もみじの家のサポーターが増え、支援が手厚くなっていることを実感できます。 

寄付の呼びかけに加えて、自治体の補助金制度を新たに創設してもらう取り組みにも力を入れました。 

ありがたいことに、もみじの家がある世田谷区では、僕が着任する前から制度が整っていました。短期入所施設が区内に住む障害の重い子どもを受け入れると、その利用日数に応じて補助金を支給する制度です。区内には120人を超える登録者がいて、医療的ケア児たちの利用頻度は、自治体別ではもちろん世田谷区が最多です。

施設側としては運営の下支えとなる貴重な収入源ですが、これは区の制度ですので、当然のことながら、登録者の8割近くを占める区外の子どもたちの利用に対しては支給されません。そこで、僕は思い立ちました。