組織にもたれて過ごせる余地はさらに小さく

人生100年時代という言葉が最近は定着した感がある。今40歳なら半分にも達していない。50歳でもまだまだ人生の折り返し地点ということになる。

60歳の定年時の平均余命を見ると、現在でも男性でおおよそ24年、女性で30年近くある。今後も寿命はさらに延びていくだろう。もう誰もが第二の人生を持つ時代になった。

もはや誰もが第二の人生を持つ時代に(写真提供:PhotoAC)

転身という言葉はまだ必ずしも市民権を得ていない。その必要性を感じさせた最初のきっかけは、バブル崩壊後の1993年、オーディオメーカーのパイオニアが数十人の管理職に対して退職勧奨したことだろう。マスコミはこれを指名解雇だと取り上げて「パイオニアショック」と呼んだ。

それまでは日本の大企業では経営者は社員の雇用を守ることが暗黙の前提であった。それ以後は低成長の中で退職勧奨は特に珍しいことではなくなっている。

バブル期に過剰に採用した中高年社員の処遇問題もこの背景にはある。また昨今のコロナ禍によって経営が厳しくなっている企業は増えていて、企業業績を回復させるためや、会社の構造を変えるための早期退職、派遣切りの増加などが今後も予想される。

従来の長期雇用や年功序列が当然のように続くとは考えられない。同時にコロナ禍により在宅勤務やテレワークが進みつつあり、みんなで顔を合わせて一緒に仕事を進めるという日本型の雇用システムも変更を迫られている。今までのように組織にもたれかかって過ごせる余地はさらに小さくなっていく。

高齢者雇用安定法の一部が2021年4月に施行され、70歳まで働くことが前提となっている。この法律の中でも、創業支援が取り上げられていて、雇われない働き方、独立が盛り込まれている。