イラスト:堀川直子
年齢とともに消化する力が落ちつつある世代におすすめしたいのは、食材の冷凍保存。上手に取り入れれば、バランスの取れた食卓が完成します(構成=村瀬素子 イラスト=堀川直子)

冷凍保存してフードロスを防ぐ

野菜、果物、きのこ、肉、魚の切り身……わが家の冷凍庫には、フリーザーバッグに入った食材がぎっしり詰まっています。

読者にも、年を重ね、子どもが巣立って夫と2人、あるいは自分ひとりになったという人が多いかもしれません。私自身も60代半ばでひとり暮らしになりました。食事をする人数が減ると、「料理をするのがおっくう」と思いがち。さらに、最近は「食品ロス」の問題もよく耳にします。「食材を余らせてダメにしてしまうのでは」と考えると、多品目を購入するのをためらう人もいるでしょう。

そこで、管理栄養士としていかに食材をムダにせず、手間をかけずに料理をし、きちんと栄養を摂ることができるか? と考えて辿り着いたのが、食材を冷凍保存し、それを活用する調理法だったのです。

スーパーで販売されているネギなどの野菜は、1本より3本などセット売りのほうがお得ですよね。でも3本買ってもひとりでは食べ切れません。そこで、ネギならすぐに使う分以外は小口切りにして冷凍保存してしまう。すると、汁物にちょっと薬味がほしいときなどに重宝するのです。

私は大根も丸ごと1本購入しています。甘みの強い上部は輪切りにし、電子レンジで加熱してから白だしをかけて冷凍しておけば、すぐ煮物が作れる。中央部は千切りにし、辛みの強い先端部はすりおろして冷凍。それを味噌汁の具にしたり、みぞれ和えにしたり、いろんな料理に使っています。

健康を維持するためには栄養バランスのいい食事が不可欠です。とくにシニア女性は、消化吸収力が落ちて、お腹がすきにくくなるため、お昼は焼き芋、夜はうどん、といった手軽な食事ですませてしまいがち。結果、炭水化物が多くなり、たんぱく質が不足する人もでてきます。一汁三菜のように少量多品目を摂取すれば、自動的に栄養バランスが整いますし、彩りも豊か。そんな豊かな食卓を叶えてくれるのが、冷凍食材なのです。

たとえば、みりんと醤油に漬けて冷凍した魚の切り身を焼き、冷凍白菜を戻して甘酢和えに。冷凍きのこや玉ねぎなどの野菜を味噌汁に入れれば、あっという間に主菜、副菜、汁物のでき上がりです。

冷凍すると食材の味や栄養価が落ちるのではないか、という懸念を持つ人もいるでしょう。実は、冷凍しても、大きな変化はありません。むしろ冷蔵庫にただ寝かせておくよりは鮮度を保てます。

ただし、冷凍したものを解凍すると水分が流出するという問題が。水分は凍ると体積が増えて食品の細胞膜を傷つけるため、解凍したときに細胞膜の隙間から水分が溶け出てしまうのです。対策として、葉野菜など水分が多いものは、あらかじめ塩でもむ、水切りをする、加熱する、といった方法で水分を排除しておく。こうしたひと手間を加えれば、ほとんどの食材は冷凍できると言っても過言ではありません。