いろんな面からみて、入院患者は弱者
さもあろう、と私は納得しました。
彼女だってまだ40歳になるやならず、戦後第一期生として今よりもずっと女性にきびしい時代を生き抜き、ようやく職場で自分の意見が反映できるところにたどりついたのです。私も「これから」の人でしたが、彼女だって企業内で「これから」の人でした。
折しも世界にウーマンリブと呼ばれる第二波フェミニズムの波が拡がり、戦後四半世紀ほとんど動きがなかった女性の活動に新しい局面が開かれてきた時期です。どれだけ言いたいことが、したい仕事があったことでしょう。無言でいるよりほかどうしようもない無念さだと思います。
それ以来、私は病気見舞いという行為にいささか慎重になりました。
考えてみると、ベッドに横たわる病人と、かたわらに立つ見舞客とでは、目線の高さからして違います。外出姿でやってくる見舞客と、病苦とたたかう入院患者とではおしゃれ度が違うのもあたりまえ。
いろんな面からみて、入院患者は弱者です。心遣いが必要なのは見舞客の側であることは間違いありません。