相手の思いを大切に

お通夜、葬儀の席で私は穴があったら入りたい思いでした。従兄にあたる長男によれば、叔母は長い入院中おおむね機嫌よく過ごし、いつも私のことを自慢にしていたそうです。

私がたまたまテレビ出演中に看護師さんが入ってきたりすると、「これ、見てやってください。うちの姪なのよ」。

私が従兄に「おばさま、お見舞いご無用とおっしゃったと聞いたので」と言いわけすると言われてしまいました。

「恵子さん、お見舞いも来てほしい人とそうでない人とがあるんですよ」

うーん、その通り。温厚な従兄はそれ以上言わず、叔母亡きあともつき合ってくれましたけれど。

病気見舞いというのは、人間関係・力関係の集約点でもあり、気を遣うことが多いものです。

いくつかの失敗や苦い経験を踏まえて、今の時点で思うことは、やっぱり相手に問い合わせて、承諾してくれたら長い人生を共に歩んだ同世代の友人に、心から感謝のことばを伝えていきたいと思っています。

※本稿は、『どっこい生きてる90歳 老~い、どん!2』(婦人之友社)の一部を再編集したものです。


どっこい生きてる90歳 老~い、どん!2』(著:樋口恵子/婦人之友社)

読者から大きな反響と共感が寄せられた『老〜い、どん!』から3年。待望の続編です。「2022年5月の誕生日を迎えると、私は90歳。米寿を過ぎ、90代という本格的な高齢期に入りつつあります。かつて私が考えていた老いというのは、あえて言えば“かりそめ”の老い。嘘ではないけれど、あれはまだ老いの入り口だったということをつくづく思います」と樋口恵子さん。読者からの人生相談、密着した樋口さんの1日も必見。シニア世代に勇気を与える1冊です。