車椅子に乗りながら学生と話す現在の出口治明さん(写真提供:APU(C))
「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(厚生労働省)によれば、日本人の死因の4位が脳卒中となっています。脳卒中は、かつて日本人の死因の1位を占めていましたが、医療の進歩によって亡くなる患者の数は減少。しかし、患者の数そのものは変わらずに今も多いのが現状です。ライフネット生命保険株式会社創始者で、立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さんも、2021年1月に脳卒中を発症。リハビリ生活を送ることになりました。しかしリハビリ開始時に出口さんが掲げた目標に対し、周囲のスタッフはかなり心配していたそうで――。

希望からかけ離れて

急性期病院からリハビリ専門病院にくると、1日3時間のリハビリが始まり、体力が落ちている病人にとってはそれなりの負荷になります。だから転院したばかりの頃は疲れてしまい、リハビリが終わるとベッドに倒れ込むように寝る患者も多いそうです。

僕も転院して1週間ほどたった頃、非常に疲れがたまってきました。

「リハビリにお迎えに行っても元気がなく、身体もちょっと不安定でいつもよりシャキッとしていない感じがあったので、おそらく急に疲れが出てきてしまったのでしょう。ここで落ち込んでしまう可能性もあるかな、と思いました」(瀬尾沙記江言語聴覚士)

すでに触れたように、転院した当初の僕の希望は学長職への復帰で、「退院する6ヵ月後に講演ができ、別府へ単身赴任できる」水準に身体と言葉の機能を取り戻すことでした。

しかし当時の僕の状態は、希望からは遠くかけ離れていました。それは客観的な指標にも表れていました。