『グレイテスト・ショーマン』のバーナムは突然歌いだす

人気のミュージカル映画である『グレイテスト・ショーマン』(2017年アメリカ公開、2018年日本公開)の冒頭には次のような場面があった。幼いバーナムとチャリティが海辺で話し始めると間もなくバーナムが突然歌いだす。

登場人物が歌うというこの「ミュージカル場面」が始まって間もなく、二人がいつのまにか林に入っていく映像に切り替わる。そして鳴り続けている歌は人物の動きからずれ始める。

歌はそのまま続く一方、映像はその後の二人の別れや困難、数年にわたる文通による繋がり、成長したバーナムが求婚に訪れ、結婚して新居の屋上で踊るまでの流れを映し続ける。

この一連の場面は、開始時にこそ台詞から歌への断絶があったものの、その後は映像と歌が分離するにつれ、歌がBGMとして機能し、長い年月の経過を表現する役割に変わる。その間の経緯は断片的な言葉と映像で説明される。

場面は次々に異なる時間と場所のカットを映すのに、音楽は一曲の歌のまま連続して流れ、それが二人の物語の継続性と幼少期の記憶をも負っているわけである(映像に合わせて歌声は少年の声から大人の男声に変わり、チャリティも歌声を重ねる)。

個別の場面を連ねる際に生じる時間や場所の飛躍が、持続する音楽によって一つのシークエンス(ショットやシーンのまとまり)として成立しうるということは、映像の世界ではよく知られた技法である。