生前の宮崎恭子さんと唐十郎さんとの「演じる」というテーマの雑誌の対談を、私は企画・構成したことがあった。
その中で恭子さんは、女は惚れた一人の男に気に入られるような女を、生涯演じ続けるものなのだ、と語っている。つまり恭子さんはそれほどまでに惚れ込める相手と出会ってしまったのだ、と強く心に受け止めた覚えがある。
――そうでしたか……。本当に宮崎の存在が私を支えてくれてましたね。たとえば、こんな話をして申し訳ないですが、ある時期からすごい売れっ子になったんですよ、僕。で、映画の台本が一どきに5、6本来る。その中から一作を選んで出演する。彼女が先に全部読むんですが、自分の意見は言わないで、全部僕の好きに選ばせましたね。
そのころはもう無名塾をやっていましたから、経済的な問題も含めて意見はあったでしょうけど、それを絶対言わない、宮崎さんは。あとで聞くと、断った作品のほうが10倍もギャランティが多かったりしてね。
それと、映画会社の出してくる素晴らしい条件にもかかわらず、僕が専属にならなかったことで、半年は舞台、もう半年は映画というローテーションを組めたこと。専属になっていたら映画の出演作品も選べないし、年一本の芝居もできない。
だから宮崎さんを含めて、良い状況に自然に流れて行ったというのか、子供のころからすごい苦労をして、このころになってようやく幸運のお返しが来た、という感じですかね。