私たちは「美味しさ」をどのように判断しているのでしょうか――(写真提供:photoAC)
「美味しい」と感じる日々の食事。しかし、その「美味しさ」は舌だけで決まるものではなく、見た目や咀嚼音なども影響しています。九州大学大学院比較社会文化研究院講師の源河先生によれば、「味覚のみで感じられ、かつ、他から影響を受けない〈純粋な味〉などない」とのこと。たとえば、目隠しをして食事をすると、通常よりも少ない摂取カロリーになるそうで――。

「見た目も〈味〉に含まれるといえる理由」からつづく

見た目が味に与える影響

視覚の影響は聴覚の影響とは少し違っているのではないかと思った人もいるかもしれない。聴覚の場合、食感と音には対応関係がありそうだ。パリパリするものとふにゃふにゃしたものでは、前者の方が噛んだときに大きい音や高い音がする。

そのため、音を大きく高くしたときにパリパリさが増すように錯覚するのは納得できる。これに対し視覚の場合、丸いものは角張ったものよりも必ず甘いわけではなく、赤いものが緑のものより必ず甘いわけではない。それなのになぜ丸かったり赤かったりする方がより甘く感じられるのだろうか。

視覚から味への影響には期待や知識が重要な役割を果たしていると言われる(ハーツ[2018]pp.143-144、pp.169-170)。果物がわかりやすいように、甘いものは丸いことが多い。私たちは丸さと甘さを両方もつものを何度も食べているうちに、丸いものは甘いという期待を抱くようになってしまっている。そのため、丸い食べ物を見ると甘いのではないかと期待され、その期待が影響してより甘いと思ってしまうというのだ。

同様に、熟した果物は赤くて甘いが、熟してない果物は甘くなく青や緑であるという経験則を身につけていると、赤いものを見たときに甘さが期待されるのだ。