●ハンス・ホルバイン『大使たち』
まずホルバインの『大使たち』。フランスからイングランドへ送られた二人の若い大使の肖像画だ。背景にはイングランド王ヘンリー八世の離婚問題があり、(離婚を認めない)カトリックと手を切ろうとしている王を、なんとか翻意させるのがフランス大使のミッションだった。だが画面中央の目立つ場所にリュートが置かれ、弦の一本はゆるみきっている。交渉失敗はこの時点で明白だったわけだ。
●ピーテル・ブリューゲル『死の勝利』
ブリューゲル作『死の勝利』は、大軍団で襲いかかる骸骨に立ち向かう人間の悲壮な戦い。そんな中、一組の男女だけがリュートをかき鳴らし、恋に浸って周りが全く見えていない。
●カラヴァッジョの『リュート奏者』
カラヴァッジョの『リュート奏者』は、少年と青年のあわいにいる、いや、男とも女ともまだはっきりしないリュート奏者の妖しいエロスが漂う作品。ここで彼がバグパイプを大音量で吹いていたら、ぶち壊し。