●ハンス・ホルバイン『大使たち』

ハンス・ホルバイン『大使たち』1533年 ナショナル・ギャラリー蔵

まずホルバインの『大使たち』。フランスからイングランドへ送られた二人の若い大使の肖像画だ。背景にはイングランド王ヘンリー八世の離婚問題があり、(離婚を認めない)カトリックと手を切ろうとしている王を、なんとか翻意させるのがフランス大使のミッションだった。だが画面中央の目立つ場所にリュートが置かれ、弦の一本はゆるみきっている。交渉失敗はこの時点で明白だったわけだ。

 

●ピーテル・ブリューゲル『死の勝利』

ピーテル・ブリューゲル『死の勝利』1562 - 1563年 プラド美術館蔵

ブリューゲル作『死の勝利』は、大軍団で襲いかかる骸骨に立ち向かう人間の悲壮な戦い。そんな中、一組の男女だけがリュートをかき鳴らし、恋に浸って周りが全く見えていない。

 

●カラヴァッジョの『リュート奏者』

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『リュート奏者』1595年頃 エルミタージュ美術館蔵

カラヴァッジョの『リュート奏者』は、少年と青年のあわいにいる、いや、男とも女ともまだはっきりしないリュート奏者の妖しいエロスが漂う作品。ここで彼がバグパイプを大音量で吹いていたら、ぶち壊し。