今もちらし寿司を食べると姑のヨネコさんを思いだす

それから、ちらし寿司を食べながら思い出すのは姑・ヨネコさんのこと。今はもっぱら妹の作るちらし寿司を食べるばかりで、自分ではすっかり作らなくなってしまいましたが、姑が生きていた頃は家族のお祝い事のたびに作っていたものです。

干し椎茸、かんぴょう、ニンジン、高野豆腐、ちりめん、酢レンコンなど具沢山で、それぞれの材料を一つずつ別個に煮るのですから、時間も手間もかかります。

台所のテーブルの上に大きな寿司桶を置いて、炊き立てのごはんをドサッと入れて酢飯を作り、その中に次々と具を入れていくのですが、その傍らにはいつも着物にたすき掛けをした勇ましい姑の姿がありました。酢めしをウチワであおいで粗熱を取るというのが姑の役割なのですが、まるでちらし寿司作りの長のようでした。

出来上がったら、シラス、錦糸卵、サヤインゲンの細切り、紅ショウガ、白ごま、手でバリバリ破いて適当な大きさにした海苔をバラまき完成です。お花畑のような鮮やかな色合いにうっとり。

今もちらし寿司を食べていると、あのたすき掛けをしてウチワをもった姑のヨネコさんの姿が蘇ってきます。

「あしたはタッちゃんの誕生日ねー。何が食べたい?」と孫に聞いていると思ったらすぐ、台所へ来て「ママ、タッちゃんはあしたちらし寿司が食べたいんですって」。

”自分が食べたいんでしょ”と思いながらハイハイ。

※本稿は、『小さなひとり暮らしのものがたり』(興陽館)の一部を再編集したものです。


小さなひとり暮らしのものがたり』(著:みつはしちかこ/興陽館)

80年生きても、人生まだ片思い中。チッチとサリーの初恋を描き続けて60年。作者が打ち明ける、ひとり時間の楽しみかた。「人生後ろ向き。心のアルバムを開けば、明日を生きる力がわいてくる」国民的ロングセラー『小さな恋のものがたり』を描き続けてきた漫画家・みつはしちかこ。 ひとり暮らしで今も現役で描き続ける作者の、日常の楽しみと片思いの喜びをつづった、描きおろしエッセイ集。