「チッチ」誕生秘話

そして、私の高校時代からの片思いも順調に続いていたのです。私は漫画家を目指し、浪人中の彼は親に内緒で喜劇俳優を目指していました。お互い”人を笑わせたい”という夢で、話が盛り上がっていました。

私は中学時代までコンプレックスのかたまりでしたが、高校に入って放送劇部に入ると、突如人が変わったように社交的になったのです。私が2年生になって美術部から放送劇部に転部してすぐに、都のコンクールでやる放送劇のシナリオを書き、その劇が優勝したのです。

きっとあの感激が私を変身させてくれたのでしょう。その放送劇部で一緒だったスルメ君が、後に私の漫画の「サリー」になったのです。

「その放送劇部で一緒だったスルメ君が、後に私の漫画のサリーになったのです」(写真提供:Photo AC)

そうして、漫画家になりたいという夢の風船がどんどん膨らんでいき、「とにかく作品作りだ!」「自分にしか描けない漫画を目指そう!」ということで、高校時代の日記帳をめくりながら思い浮かんだのが「チッチ」という野の花のような女の子。

こうして、チビでドジなチッチが満身の勇気を振り絞ってサリーを追いかけるという物語が誕生したのです。