みつはしさん「青春の心を失わない限り、自分の片思いは見つけられます」(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
60年以上にわたり、国民的ロングセラー『小さな恋のものがたり』を描き続けてきた漫画家・みつはしちかこさん。同書は1976年にミリオンセラーとなり、77年に日本漫画家協会賞・優秀賞を受賞しました。そのみつはしさん、80歳を超えた今も、ひとり暮らしを続けながら現役で漫画を描き続けています。しかし今振り返ってみれば、『小さな恋のものがたり』の連載を始められたのは「奇跡的」とも感じているそうで――。

デビュー60周年を迎え

今年(2022年)、漫画家デビュー60周年目を迎えました。

漫画を描き始めたのはいつ頃だったのか……。よく覚えていませんが、小学校の4年生かな。子ども時代から漫画家になりたいと考えていたのですが、当時の大人は漫画に対して批判的で、私も父から「漫画なんか描いてないで勉強しろ!」とよく叱られていたものです。

高校卒業後は、小さなデザイン事務所に、見習いとして拾っていただくことになりました。「つるバラの小さな職場に出勤す」というのは当時作った俳句。

デザインというので、私はてっきり好きな「絵」に関係する会社だと思い込んでいましたが、私の勝手な大まちがい。そこはインダストリアルデザインといって、洗濯機やカメラやオートバイとか、電化製品のデザインをしている会社だったのです。私にとっては苦手な数学のような難しい仕事でした。

やめたいやめたいと思いながら、1か月でやめたら父に怒られると思って、1年間見習いで行ってました。

0・01ミリまでこだわって設計図を描いていくという緻密な世界で、私にはチンプンカンプンだったし、性分に合わないし。窓際の席でぼんやりと隣の幼稚園を眺めて過ごす1年間を送ったあと、やめてしまいました。