人間の不完全さを認識できさえすれば

人間の不完全さを認識できさえすれば、欠陥や失敗すらも余裕をもって見られるようになり、逆に腹も立たなくなってきます。

人間は本来ならこうでなければいけない、ああでなければいけないと、理想を盛り込み過ぎるのはストレスを溜め込む要因になると思います。

「大丈夫だ。古代から何度もパンデミックは起きてきたが、俺たちはそこから選ばれて生き抜いてきた遺伝子をもっている。だから今回もきっと大丈夫だ」

パンデミックが始まったばかりの頃、動揺する私に言った舅(しゅうと)のあまりに楽観的な言葉を、度々思い出します。生き残れる者が生き残ればいい。古代ローマからの疫病の歴史を身近に見てきたイタリア人たちが、コロナ禍にあっても前向きに笑い合える所以(ゆえん)を見た気がしています。

※本稿は、『歩きながら考える』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


歩きながら考える』(著:ヤマザキマリ/中公新書ラクレ)

パンデミック下、日本に長期滞在することになった「旅する漫画家」ヤマザキマリ。思いがけなく移動の自由を奪われた日々の中で思索を重ね、様々な気づきや発見があった。「日本らしさ」とは何か? 倫理の異なる集団同士の争いを回避するためには? そして私たちは、この先行き不透明な世界をどう生きていけば良いのか? 自分の頭で考えるための知恵とユーモアがつまった1冊。たちどまったままではいられない。新たな歩みを始めよう!