「小さな仕事」や「半径3mの世界」に視点をシフト

――体力や記憶力の衰えには、どう対処したらいいのでしょうか?

「年齢は数字じゃないので、体力はや記憶力は衰えますし、生涯現役だからって若ぶらなくても良いと思います。現在50代以上の人は、若いときに様々な不測の事態や、“もうムリ!”という状況を何度も経験し、その都度、乗り越えてきたはずです。

たとえば、満足に英語も話せないのに、いきなり海外出張に行かされたり。今のように、なんでも簡単にググれる時代ではなかったので、予期せぬ困難にぶちあたっても自力で解決しなくてはならないことも多かった。

そんな経験の中で培ってきた“暗黙知”は決してお金では買えません。たとえ“**会社の部長”ではなくなっても、“暗黙知”は自分にとっての宝です。全く違う職種や、若い人と関わる中で、点と点がつながって自分でも思いつかなかったようなアイディアが浮かんだり、皆が気づかないところに気づけてセイフティネットになったり、色々なことができる。

それに、会社の中にいると60代もう定年…みたいに老人のように扱われるけど、一般の社会に出たらまだまだ“若造”なんです。60代以降は、その能力を役立てて働いていくことが、自分自身の、ひいては社会全体の幸せにつながっていくのだと思います。」

 

「今や働く人の6割が40代以上」と、河合さん。労働人口がますます高齢化していくこれからの時代は、60代、70代以降も働き続けることが当たり前の社会になっていくと、坂本さんも河合さんも口を揃えておっしゃいます。

そのときに、いつまでも若いときと同じスタイルで働き続けるのは無理がある。お2人の言葉を借りれば、「小さな仕事」や「半径3mの世界」に視点をシフトしていくことが重要なキーワード。

もちろん、高齢になっても、生活費のために働き続けねばならないという厳しい現実があることも事実です。でも、その中で、人生経験を重ねたシニアならでの人間力を活かし、「他者に喜んでもらう」という仕事の本来あるべき姿に立ち返ることが、60代、70代、あるいはそれ以上になっても、幸せに働き続けていくための答えなのではないでしょうか。

 

この記事は、Yahoo!ニュースを通じ実施したアンケートの結果を利用しています。
アンケートは全国のYahoo!JAPANユーザーを対象に2022年7月に実施しました。


坂本さん著書
ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』(講談社現代新書)

年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70代男性の就業率は45%、80代就業者の約9割が自宅近くで働く……全会社員必読! 知られざる定年後の「仕事の実態」とは?漠然とした不安を乗り越え、豊かで自由に生きるにはどうすればいいのか。豊富なデータと事例から見えてきたのは、「小さな仕事」に従事する人が増え、多くの人が仕事に満足しているという「幸せな定年後の生活」だった。日本社会を救うのは、「小さな仕事」だ!

 

河合さん著書
THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)

50歳は、まだ人生の途上なのだ──。
「45歳定年制なんて聞いてない」
「役職定年こんなはずじゃなかった」
「定年延長やめときゃよかった」
必死に走り続け、気がつけば「働かないおじさん」扱い。五十にして天命を知るどころか、迷い、戸惑い、恐れている……。「サラリーマン“無理ゲー"社会」をこれからどう生きる。気鋭の健康社会学者にして、Web連載コラムがビジネスマンに大人気の著者が、最新研究の知見、直接インタビューをした約900人のビジネスマン、みずからの実体験を通して語る、まったく新しい“幸福を手にする"ための生存戦略。