てぃ先生「日本の親は、もっと〈親バカ〉になったほうがいいと思います」と語る

家の中では鼻を伸ばさせてあげて

てぃ先生 家の中で言っているぶんには別にいいと思います。「ああ、良かったね。あなたは足が速いんだね」と応えてやればいい。その子だって、ある程度の年齢になれば、自分より足の速い子はいくらでもいることが自然とわかっていくんですから。わざわざ家庭内で「あんたなんて」と言わなくても、高々伸びた鼻はどうせ外で自然に折れる。

高濱 さっき例に出したアソビューの山野くんも、まさにそうだったね。

彼はその後、高校で成績はまったく良くなかったけれど地区内のサッカーでは小さな成功体験ができて、「俺はすげえ」という気持ちを持ったまま、リクルートに就職した。でも配属された営業部では、成績が下から二番目ぐらいで「なんだ、この世界は」と衝撃を受けるわけ。そこで彼がすごかったのは、「すみません、僕天狗になっていました。どうしたら売れるんでしょうか」と、先輩や上司に聞きに行けたこと。これが自己肯定感のある人の特徴。どんなに鼻をへし折られても、芯が潰れることがない。

「どうせ俺なんかダメなんだ」という発想に陥ると、何もできなくなってしまうんだけれど、彼のように「おかしいな、俺できるはずなのに」というのがあると、「なぜだろう、教えてください」と、人にも相談できる。

つまり彼の成功の秘訣は、田舎の御山の大将だった、ということなんだ。ノーベル賞受賞者はほぼみんなそのタイプだね。受験の枠組みに縛られることなく、地域で一番の学校には入ったけれど特になんの勉強もしていなかったような子が、あるとき目覚めてすごい成績を残し、自信を持って突き進めるようになる。結局それぐらいのペースでいいんだよね。

幼児期の子どもの鼻は、絶対にへし折らないこと。大人は「あんた本当にすごいね、大好き!」とだけ言っていればいい(笑)。