2020年、近所の飲食店にて。手前が照枝さん(左)と歌江さん(写真提供◎花江さん)

12歳の時に歌江姉ちゃんがお嫁に行きはって、私は漫才が嫌いやったのに照枝姉ちゃんと2人で組むことになってね。これが7年間まったく売れず、本当に苦労しました。そこに歌江姉ちゃんが戻ってきてくれて、私が19歳の時、「かしまし娘」になったんですわ。

姉妹ですけど3人とも個性はバラバラ。歌江姉ちゃんは世話焼きやね。人の面倒もよく見てはった。照枝姉ちゃんは体が弱かったので、何か調子が悪かったら「ハァ~」とため息をつき出すの。そしたら誰も逆らえない。(笑)

歌江姉ちゃんから聞いたけど、姉2人での漫才の仕事が終わって帰るまでは知らん顔してるのに、家の前で「歌江姉ちゃんにいじめられたあ」って急に泣き出すんやて。面白い姉でしょ。自分の好きなように生きてはって、言いたいことを言うても人に好かれるタイプやね。

私は利己主義やったので、人には好かれなかった。7歳からずっと一人で旅してたのもあって、自分を守ろうと思ってたのかもしれません。でも3人一緒になったら、姉たちが頑張ってくれるから自分も頑張れるんだとわかって、初めて感謝する気持ちがわいてきました。おかげで今は、昔より性格がようなってると思うてます。(笑)

かしまし娘は、上の姉が三味線で民謡系、下の姉がギターでジャズ系、私もギターやけど演歌系。ひと通り弾ける音曲漫才トリオがほかにいなかったんで、初舞台からウケたんです。それから1ヵ月で東京に行って、寄席のテレビ番組にもどんどん出るようになりました。

漫才中に姉妹が本気で喧嘩するのも面白かったみたい。妹2人がむちゃくちゃ言うんで、シャレが通じない歌江姉ちゃんは怒って楽屋にこもってまう。お客さんからしたら、それが親近感あって微笑ましかったんでしょうかね。姉2人が達者やったから私もこの世界で生かされて、今があるんやと思うてます。