ユーチューブ公式チャンネルが、登録者数149万人を突破。シンプルで簡単な美味しい家庭料理が人気の料理研究家・コウケンテツさん。そんなコウさんでも、《料理がしんどい》と感じることがあると話します。毎日の料理にコウさんのレシピを役立てている酒井順子さんとともに、《料理がしんどい》の背景にあるものを深掘りしました(構成=山田真理 撮影=洞澤佐智子)
家庭からストレスをなくすという大命題
酒井 私の世代は特にそうかもしれませんが、母親が専業主婦で、料理はすべて手作り、食卓は家族で囲む、という育てられ方をしている人が多くいます。
そのせいか、自分は仕事をしているから母親と同じようにするのは無理なのに、そこに罪悪感を抱いてしまう。「ああ、今日も冷凍食品を使ってしまった」というように。男性と同時に、女性側の意識改革も必要なのではないかと思うんです。
コウ そういう食卓神話って、本当に根深い問題ですよね。世の中がこれほど大きく変わっているのに、食卓のあり方には「正解」があるという考えには無理がある。
たとえば僕は、自分のライフスタイルを公開しているからか、「家族で食卓を囲めるって幸せですよね」と話題を振られることが多いんです。そのとおりでもあるし、美しい言葉だけれど、料理を作るのが嫌いな人だっているし、団らんが好きじゃない人だっているでしょう。僕も、「たまには一人飯がしたいな」と思いますし(笑)。
家庭と個人、時と場合によって、それぞれの「正解」があるんです。
酒井 私も、パートナーが留守の日は「好きなものを食べよう」と、一人でステーキを焼いてます。
コウ 素晴らしい!