今日にも引き継がれるパンダの政治的役割

しかしパンダも生き物である以上、必ずこの世を去る日が来る。パンダに魅了された世界中の人々や動物園は、一頭死ぬたびに新しいパンダが再びやって来ることを望むのが常であった。

そもそも、中国初のパンダ外交である1941年のアメリカへの贈呈は、パンダが死んでいなくなったニューヨークのブロンクス動物園での「後継パンダ待望論」の高まりを背景としている。

また、46年のロンドン動物園への贈呈も、死亡したパンダの補充の側面をもっていた。中国政府はパンダをほしがるアメリカの動物園に対しても、「贈ることができない」というアピールを通じて、同国政府の対中国政策を批判した。

中国政府は「パンダを譲渡する/しない」を通じて、相手国の対中国政策について「支持/不支持」の意思表示を行ったわけである。そして中国は日本に対しても60年代末以降、これとよく似た意思表示をしている。

このようなパンダの政治的役割は、今日に至る日中関係にも引き継がれている。