弱音を素直に吐けるようになった

当時の私は「家族、友だち、恋人より仕事をとります!」という感じで、何においても仕事が生活の中心。でも、その生き方だとそこにすがりつくしかありませんよね。実際、すがりついていましたし。些細な失敗さえ自己否定の材料になり、自分と周囲の俳優さんを比べては落ち込み、「あの人みたいな演技ができたらいいのに」と悔しくて泣いていました。

人に相談すればよかったのですが、一人で内にこもって完結したほうがラクだと思っていたんです。自分に自信が持てないから、人に評価されたい、ちゃんとしなきゃ、という思いも強くなっていたのかもしれません。ああ、これは自分に優しくできていないなと、断捨離をしたことで初めて気がつきました。

そんなこともあり、仕事以外の趣味で私生活を充実させたいと思うようになったのです。ちょうどその頃、スポーツジムで知り合った華道の先生にお誘いいただき、いけばなの展覧会を見に行きました。そうしたら、すばらしい作品ばかりで。「水をも生ける」という華道の言葉にも感銘を受け、3年ほど前から先生のお教室に通っています。

華道には「三方正面」「四方正面」という概念があり、どの角度からも見ても正面になるように生けるんです。枝は表裏で色が違いますし、どの向きに生けるかで脇役の花に突然スポットライトが当たる。そういう気づきが楽しくて。

私自身、ものごとを多面的に捉えられるようになりました。生きていれば悲しいことも腹立たしいこともありますが、いまはそのたびに立ち止まって、自分に優しく考えることができていると思います。