(撮影=宅間國博 構成=内山靖子)
自分を癒やすために書いている
小説を書き始めたのは、2020年の5月末です。ちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大して、人とのつながりがどんどん薄くなっていった時期でした。ステイホームを強いられてしまうと、一人暮らしの私は話し相手が飼い猫しかいません。そんなとき、何か自分のよりどころになるものを作りたいと思ったのがきっかけです。
もちろん、小説を書くのは生まれて初めてです。18歳で芸能界に入ったとき、お芝居が上手になりたくて名取裕子さんに相談したら、「本を読んで、登場人物を頭の中で動かすことね」とアドバイスしていただいて。それ以来、《読む》ことは続けてきました。でも、自分で書きたいと思ったことは一度もなかったし、そもそもどうやって書いたらいいのかもわかりません。
最初は、誰かの手をお借りして、頭の中にある物語を文章に起こしてもらおうと思っていたんです。そうしたらマネージャーから、「イメージを伝えるために、あらすじだけでも自分で書いてみたら?」と。
最初はそれさえも抵抗があったのですが、人に見せるものでもないんだから、と背中を押されて。スマホで書き始めてみると、「この背景を伝えなきゃ」「あのエピソードも入れてもらおう」と加えるうちに、いつしか長篇小説になっていたという……。(笑)
それだけ書くことが楽しかったんですよね。お仕事がない日は、朝起きて自分と猫の朝食を終えたらスマホのメモ機能を使って書き始め、日が暮れて猫に夕飯を催促されるまで延々と文字を打っています。ちっとも大変じゃありません。
自分の頭に湧き上がるストーリーが形になっていくのが、とても楽しい。書き上がったものをあとでニンマリしながら読み直し、また新たな想像が広がっていく――という繰り返しです。
それに、昨日はうまく書けなかった部分が今日は「できた!」と、一歩ずつ前進しているのを実感できるんです。この言い回しで解決するんだとか、文章を入れ替えたらわかりやすくなるなとか。コツコツ書くのも性に合っているし、自分で自分を褒めることができるからこそ、ここまでハマったのだと思います。