「実写にすると、おそらく感動は半分になってしまうと思います。リアルに描いているとはいえ、光や影の演出はアニメならではのもの」

実写ではできない感動をアニメーションで

企画書から脚本、ビデオコンテまでを新海監督が作成し、それを設計図に、作画や美術背景、CG、撮影、などの作業が進む。作画監督だった田村篤氏を始め各セクションの打ち合わせを重ね、アイデアを結集させて試行錯誤しながら思いを込めて作る。アニメーションに対する思いを、下記のように述べた。

******

僕は、アニメーションでなければできないことを大切にしたいと思っています。僕の作品を観た人から、「これだけ現実の東京を忠実に描くのなら実写でもいいのでは?」とよく言われるのですが……。僕の見解では、たとえ実写にできたとしても、上映時間が2倍以上になってしまうでしょう。実写では、たとえば瞬きを何度するのかは役者の生理的な感覚に委ねられます。一方、アニメでは1秒間を24分割して、何コマ目に瞬きをすると決めることができる。細かいパズルを組み立てるようにして作っていけば、限られた尺のなかで不自然な流れになることなく、語れることの密度を高めることができるのです。

それから実写にすると、おそらく感動は半分になってしまうと思います。リアルに描いているとはいえ、光や影の演出はアニメならではのもの。観客を美術の美しさでハッとさせ、ダイナミックな世界観へと誘うのがアニメーションの醍醐味だというのが持論です。

******

『君の名は。』、『天気の子』と注目を集める新海誠作品。日本各地の廃墟を舞台にした、最新作『すずめの戸締り』の公開も待ち遠しい。