52歳の瀬戸内寂聴さん(写真:本社写真部)
2022年11月9日、作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの一周忌を迎えます。1956年、35歳のとき瀬戸内晴美の名で作家デビュー、女性の生き方を描いた作品を次々と発表し人気作家となります。51歳で得度(とくど)、名を寂聴と改めたのちは、作品や法話を通して、人々を《ことば》で導いてきました。出家前は無宗教といってもいい立場だったとのことですが、寂聴さんが考える信仰の自由とは――婦人公論読者からの相談に答えました(1985年5月婦人公論増刊号『一冊まるまる瀬戸内寂聴人生相談』より)

信仰の無理強いは不可、たたりはない

●読者からの相談内容
義母と義姉妹が※※教に入信しています。特に義姉は熱心で、私にも入信するようしきりにすすめます。私はこれまで神様・仏様などはいつも見守ってくれているものと信じ、感謝もしてきました。誰に教えられたわけでもないけれど、仏壇にはごはんを供え、神棚には毎日水をあげてきました。だからといって、特定の宗教に入信しなければいけないというものではないと思うのですが……。主人は、信仰するしないは個人の自由だという姿勢です。

他にも似たような質問が多いのに愕きました。あなたのおっしゃるように信仰は個人の自由です。憲法にも第20条に「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と定められています。※※教をあなたの義母や義姉妹の方々が信じるのも自由なら、あなたがそれに入信しないのもまた自由です。

信仰は自由ですが、自分の信仰を無理に人に押しつけるような宗教はおかしいと思います。

無宗教の人も多数いられるし、その方々がなまじっかな信仰を持っているよりずっと立派な生き方をし、仕事を残された例も、私は身辺に見ています。私も出家するまでは、まあ無宗教といってもいい立場をとっていました。