信仰は平等に自由

それがその国々、様々な人種がつくってきた神像や仏像だと思ったら、それを偶像だと、目くじらたてて、叩きこわしたり、焼き払ったりすることもないと思うのです。

印度が好きで私はよく印度へゆきます。あそこは仏教の発生した土地ですが、そこでは多くの仏像が見るも無惨に破壊され、顔がうちこわされています。イスラム教徒が偶像だといって叩きこわした跡なのです。

それでも仏教は東漸して、今、日本に生きつづけています。

信仰は自由です。キリスト教はどんなに弾圧されても、信者はそれを死守してきました。

はりつけにされ焼かれても棄教しない信者の信仰を、権力もどうすることも出来なかったのです。信仰は自分が選ぶというより、神や仏に選びとられるもののように私は思います。

あなたの義母や義姉妹の信仰の自由を認めると同時に、あなたのその宗教をいやだという心情の自由を守りなさい。幸いあなたの御主人はあなたの味方のようですから、勇気を持って、私はいやだと彼女たちにいえばいいでしょう。

 

※本稿は、『増補版-笑って生ききる-寂聴流悔いのない人生のコツ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


増補版-笑って生ききる-寂聴流悔いのない人生のコツ』(著:瀬戸内寂聴/中公新書ラクレ)

好評を博した金言集の決定版を約60頁の大増補!健康、夫婦、子育て、老い、人づきあい…あなたの悩みにそっと寄り添う、寂聴さんの熱いメッセージ。

作家として、僧侶として、瀬戸内寂聴さんはたくさんの名言を残しています。年齢を重ね、老いを受け入れ、周囲との人間関係や、家族のかたちも変わっていくなかで、私たちは、その言葉に心のよりどころを求めます。
本書は『婦人公論』に掲載された瀬戸内寂聴さんのエッセイ、対談、インタビューから厳選したものです。
私たちの気持ちに寄り添い、一歩を踏み出す勇気を与えてくれる瀬戸内寂聴さんの言葉を、この一冊にぎゅっと詰め込みました。