新ユニホームで記念写真に納まる日本代表。フランス・リールで。2017年11月7日撮影(写真提供:読売新聞社)
2022年11月20日、ワールドカップ(W杯)カタール大会が開幕する。7大会連続出場を成し遂げ、初のベスト8入りを目標に掲げている日本は、1次リーグE組に入り、ドイツ、コスタリカ、スペインと対戦する予定だ。一方、2016年から3期にわたり日本サッカー協会会長を務めてきた田嶋幸三さんは、この間、世界基準をめざして数々の改革や決定を行ってきました。その田嶋さんいわく、なかでも18年のロシアワールドカップの開幕2か月前に行ったハリルホジッチ元代表監督交代は、自身の出処進退をかけた決断だったそうで――。

ワールドカップ開幕直前の2017年末に起きていたこと

ロシアワールドカップ開催を翌年に控えた2017年12月、日本は東アジアサッカー選手権において、韓国に1対4と大敗を喫しました。「因縁の対決」とも言われる韓国戦、しかもホームゲームであるにもかかわらず、です。

その直後、避けられない危機がやってきました。

「ぜひ、話を聞いてほしい」

数名の代表選手から会長の私に「直接会いたい」という連絡が届いたのです。それはとても珍しいことでした。

会長としては、基本的に選手と直接会って話をすることはしていません。

特定の選手と会い、話をすることで相手に過大な期待を抱かせたり、その反対に失望させたりすることがあるからです。意図せずに与えなくてよい情報を与えてしまうのは、デメリットの方が大きい、と常々考えてきました。そもそも監督を介さずに選手たちに直接会って何かを言うことは、監督に対しても失礼です。

しかし、その時の彼らは通常の状態とはまったく違っていました。切迫感にあふれていたのです。どうしても話をしなければならない、という緊張が伝わってきました。

私は都内のホテルで彼らと会い、話を聞くことにしました。