青木さんと旧知の仲・西条みつとしさん(右) (写真提供◎青木さん 以下すべて)
青木さやかさんの連載「49歳、おんな、今日のところは『……』として」――。青木さんが、49歳の今だからこそ綴れるエッセイは、母との関係についてふれた「大嫌いだった母が遺した、手紙の中身」、初めてがんに罹患していたことを明かしたエッセイ「突然のがん告知。1人で受け止めた私が、入院前に片づけた6つのこと」が話題になりました。
今回は「20年来の友人と舞台の稽古に励む人として」です。

前回「青木さやか「これを老眼というのか。もう少し可愛らしい言い方は無いものだろうか。もっと早く老眼鏡を買っておけばよかった」」はこちら

仲間と語り合うランチ

最近、昔からの友人との仕事が多い。11月末本番の舞台は20年来の友人、元々は芸人であり今は表には出ず、脚本演出を生業としている西条みつとしくんの主宰する劇団TAIYO MAGIC FILMのもの。

久しぶりに長く同じ時間を彼と過ごす毎日だ。

舞台の稽古というのは心身が疲弊するもので(他の人がどうかは知らない)苦しみつつ一筋の光を見つけながら、見つけた時は疲れも吹き飛ぶ、だけど見つからないまま帰りメイクしたままベッドに倒れ込むことも多い(他の人がどうかは全く知らない)。

10月のある日、三軒茶屋での稽古の合間に、西条くんと、三角地帯のごちゃごちゃした路地にある、香辛料の匂いの充満している天井の低いタイ料理屋さんに行った。西条くんはカオマンガイ(蒸し鶏ごはん)、わたしはパッタイ(タイの焼きそば)、若い俳優の男の子はチャーハンを頼んだ。

わたし達はチケットが売れるといいね、という話に始まり、自分自身が「有名になる、売れる」ことについて話した。

「あー俺、売れたいです!」

若い俳優の男の子は斜め上を見ながら、しっかりと言った。

「おお。なんというか、気持ちいい!こんなにはっきりと口にされると」と、わたしは言った。

青木さんもさ、と西条くんが入ってきた。

「青木さんもさ、昔バイト一緒にしてた頃、日本一売れるんだって、よく言ってたよね」