「プレッシャーを味方にした」

5度目のカド番の大関・正代は、初日に新小結・翔猿の攻めを受けるばかりで動き回り、結局負けた。NHKテレビの正面解説の北の富士さんは「バタバタじゃない。稽古してない」と嘆き、向正面解説の舞の海さんは「翔猿が素晴らしい」と讃えていた。

横綱の北の湖と千代の富士など強い力士を思い出すと、大関は横綱に進むための地位だった。今は大関は守るだけの地位になってしまった。

大関・貴景勝が結びの一番で小結・大栄翔に勝って締めてくれなければ、暗い初日になるところだった。

横綱・千代の富士は、「プレッシャーを味方にした」と何度も言っていた。

正代も御嶽海も、プレッシャーを味方にして、立ち合いで失敗しようが、はたき込まれようが、土俵際に追い詰められようが、投げを打たれようが、根性で勝ち続けるしかない。

9月場所が終わってから大相撲では、コロナ禍でできなかった照ノ富士の横綱昇進披露祝賀会、正代の大関昇進披露祝賀会、引退した力士たちの断髪式が行われた。その報道のなかで強烈な印象を受けた1枚の写真があった。インターネットの日刊スポーツの写真を見たのだが、正代の大関昇進披露祝賀会での同じ時津風部屋の豊山(前頭14枚目から今場所十両4枚目に落ちた)の大根踊りだ。

正代の母校である東京農業大学の応援団による名物の踊りだが、豊山は紋付羽織袴の姿。豊山は上げた両手にビール瓶を持ち、袴を大きく広げて踊っていて、ド迫力だ。豊山は残念な相撲が多い地味な力士と思っていたが、私の中でイメージが変わった。踊ってくれた豊山のためにも正代は勝つしかない。