【落とし穴・2】後見人はロシアンルーレット

行政や金融機関が法定後見を勧めてくることがありますが、その実態を知っているかと言えば、そうではありません。法定後見人は(1)どんな人が選任されるかわからない(2)後見人への報酬がいくらかわからない(3)何をしてくれるかわからない、と、何もわからない状態で申請するものである、ということを、理解していないまま勧めていることが多いのです。

たとえるなら法定後見人は、「どんな商品か分からない、でも、毎月2万円から毎月の収入の2、3割を本人が亡くなるまで支払い続ける」という金融商品のようなものなのです。

例えば、こんな実例があります。

行政が法定後見を実施する場合、親族(注1)の書面の同意が必要です。ある地方の行政では、書面に何の説明もなく「成年後見制度の申請をします。あなたは●●さんの成年後見人になりますか?ならない場合は、行政が申請します」という非常に簡単な内容の書類を送ってきたといいます。

(注1)本人・配偶者・4親等内の親族・未成年後見人・未成年後見監督人・保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人・検察官が申立人となります。また、法律上の一定の条件を満たしている場合には、市町村長も申立てができます。
なお、「親族」とは、民法上、6親等内の血族、配偶者、3親等以内の姻族を指します(民法725条)。したがって、4親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が、成年後見開始申立ての申立人になることができる親族に該当することになります。
出典 法テラス (houterasu.or.jp)

親族が詳細を問い合わせても「言えません」の一点張り。さらに「後見人になりますか?なりませんか?」しか聞かれず、それぞれに事情があるため「なりません」に丸を付けたと言います。しかし、後日、問題があるのではないかと、親族全員で「取り消したい」という申し入れをしたものの「すでに行政内の上層部まで話がいっているので、取り消せない」と返答がきたそうです。

法定後見について熟知している一般の人など、ほとんどいないと思われます。普通に考えれば、行政と話し合えばよいと思いますが、きちんとチェック体制ができている行政であればこんな経緯になる訳がなく、話し合いが成り立ちません。こうした場合は、早めに弁護士に相談してみることをオススメします。