日本においてのメディテーションといえば、古くから禅宗のお寺で行われてきた坐禅だろう
新型コロナ下での生活も2年となり、これまでよりストレスを感じて暮らしている方も多いのではないでしょうか? ステイホームでも、一人でもできる、自分を癒したり元気づけたりする習慣をもっていることは、精神の安定や免疫UPにも役立ちます。Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に携わり、アーティストやクリエイターの成功とメンタルの関連性について研究を続けている音楽プロデューサーの中脇雅裕さんの新連載「美しくそして健康に 音楽のあるHappy Life」。第10回は「禅と音楽」です。

「禅と音楽のコラボレーション始めました!」

この数年、欧米を中心に〈マインドフルネス ・メディテーション〉を生活の中に取り入れる方が増えています。

メディテーションの方法にはいろいろなものがあり、それぞれ目的も違ったりしますが、概ね、身体面では免疫力のアップ、血圧・血中コレステロール・血糖値の低下、交感神経と副交感神経のバランスを整えるなどの効果、そして精神面では緊張・不安の減少、うつ状態の緩和、ストレス耐性の向上が実証されており、更に脳機能面でも集中力・記憶力の向上が認められ、仕事や勉強で質の高いパフォーマンスを上げることができます。

良いことずくめのメディテーション。そして、日本においてはメディテーションといえば古くから禅宗のお寺で座禅が行われてきました。

三重県津市に1400年以上前に建立されたという禅宗の寺院「四天王寺」。
こちらの54代目にあたる倉島隆行住職の発案で、禅と音楽のコラボレーション「禅脳」というプロジェクトをスタートさせました。

手軽にお寺で座禅をして頂くため、ヘッドフォンから座禅をする手順のナレーションと、リラックスし、且つα(アルファ)波優位になるような音楽が流れます。20分ほどの坐禅体験。とても好評とのことです。

そこで今回は、津市四天王寺倉島隆行住職に坐禅についてお話を伺いました。

津市四天王寺 倉島隆行住職(写真提供◎倉島さん)

中脇 「住職、まずは坐禅の始まりについてお話しいただけますか?」

倉島 「そうですね、さかのぼること、お釈迦様がお悟りを開かれるとき、長い瞑想をされました。12月の1日から1週間ぐらいですね。その中で深い瞑想に入られまして、明けの明星をご覧になってお悟りを開かれた。そういった話から特に坐禅を中心とする我々の宗派では、毎年、お釈迦様に倣って、1週間、特に禅堂に籠りまして、深い瞑想を体験するということを毎年繰り返ししております。
永平寺に行かれると、普段は観光客の方がたくさんいらっしゃって賑やかですよね。でもその期間は、禅堂という坐禅をする場所の付近を通行止めにいたしまして、髭も剃らずに修行に没頭します。ちょうど雪も降ってくるので参拝者の方も少なくなる時期なのですが、その期間を〈接心〉といい、坐禅を特に大事にする時期としております」

中脇 「もちろん食事とかはされるのですよね?」

倉島 「そうですね、食事はしますけれども、坐禅をしながらなので、くるっと向きを変えて、そこで食器を並べて食事をいただく。坐禅を常に忘れない。寝る間もそうですし、朝起きてからずっと24時間、坐禅・瞑想します。つまり、あれこれ考えないといいますか、思考に振り回されずに意識することをやめる、そして体の働きを全て止めてしまうというものが、我々の座禅です。〈ただ座りなさい〉ということです」

中脇 「思考を止めることで、何が起きるのですか?」

四天王寺の本堂

倉島 「永平寺では1週間くらい続けて座禅をします。自分自身の体験なのですが、3日4日過ぎてくると、残りが何日かをカウントを始めてしまうのです。私はドイツの接心にも参加させていただいたのですが、それは2週間、坐禅をずっと続けるものでした。夜寝る時も横にならずに坐禅しながら眠ります。それを座睡といいます。食事もギリギリまで自分の最低限の量、一口二口だけで済ませます。
つまりもう、生産性のものを全部止めてしまうのですが、やはり最初の1週間は頭の中の思考がもう波のように、荒波のように押し寄せてきて、感情の起伏も激しくなったりしますが、それが1週間を過ぎると凪の状態になってきます。感応道交(仏と人、教える側教えられる側の気持ちが通じること)といいますか、本当に自然と一体になるといいますか、木々とか鳥とか周りにある環境と自分の呼吸がそろってくる感覚になり、本当に深い海の中にいる様な落ち着いた境地に入りました。それは実践を通じて体験したことです」

中脇 「そういったことを、我々のような素人が経験するのは難しいですね」

倉島 「いや、上手な先生がいらっしゃるとその世界に導いてくれますよ」