介護スタッフが学ぶ「自己覚知」

―― そこで、話が元に戻ってくるわけですが、それも子どもには難しいと。

川内 そもそも、他人を理解するってものすごく難易度が高いですよ。介護職の人間は、利用者の援助のために、たくさんのことを学びます。

まず、人はどうしても、自分の価値観を簡単に他人に押し付けたくなりますよね。「あなたのために、監視カメラで見守りたい」はその典型かもしれません。それをしないために、介護をする人は、「相手の価値観をまるっと受け入れろ」と教えられます。たとえば、馬が好きな人がいたとする。自分が馬に詳しくなる必要はない。でも、その人にとって馬がどんな意味があるかを知らねばならない。

―― それは本当に難易度が高い! どうするんですか。

川内 最初にやるのが「自己覚知」です。援助する側の人が、自分自身の感じ方、考え方にどんな傾向があるかを、自分で把握することです。そして「Use of Self」、自らの覚知したものを、支援に活用せよ、と促されます。

自分は何が好きで、それはなぜなのか。これを自分に問い続けていないと、人に同じことを提供できないです。そういう人が他人を支援しようとしても、ケアプランが上滑りする。形だけのものになってしまう。

自分は何が好きで、それはなぜなのか。これを自分に問い続けていないと、人に同じことを提供できない(Photo AC)

―― 上滑りって、たとえば?

川内 たとえば、「この利用者さんは植木を育てることが楽しいんだ」ということが分かったとして、「じゃ、木を植えようか」となっちゃうんです。違うんです。「なぜ植木が好きになったか」が大事です。そこにこれからのヒントが隠れているかもしれないし、木を植える場所がない場合の代替案が見つかるかもしれない。