寄り切ると「ゴール」と言うように
 

豊昇龍の師匠である立浪親方(元小結・旭豊)はNHKテレビ解説に時々登場する。コロナ禍でマスクをしているのがもったいないほどのイケメンだ。力士の頃は、俳優の松平健に似ているので、その役柄から「角界の暴れん坊将軍」とも言われていた。現役時代の両力士の相撲を思い出すと、立浪親方に叱られるよりも叔父さんの朝青龍に叱られる方が何十倍も怖いと思う。

千秋楽でなければ優勝が決まらないという取組編成会議の戦略が功を奏した。後半13日目から王鵬を上位陣に投入し、大関・貴景勝と正代という大関同士の対決なしのシステム変更で面白くなった。

23日夜にサッカーのワールドカップカタール大会の日本のドイツに対する逆転勝利をテレビで見てから、相撲とサッカーが頭の中で渦巻き、相撲を見ながら押し相撲に「イケー」と叫び、寄り切ると「ゴール」と言うようになってしまった。

サッカーの番組で、ワールドカップを含む2022年のNHKサッカー番組のテーマ曲となったKing  Gnuの新曲『Stardom』が流れると歌詞の「あと一歩」に反応し、力士の立ち合いの踏み込みの姿や土俵際に対戦相手を追い詰めながら勢い余って俵から足を一歩踏み出してしまう「勇み足」が頭に浮かぶようになった。スポーツのテレビ観戦の不思議な作用を感じている。

14日目、気分は盛り下がっていたが注目したのが結びの一番。13日目に勝ち越せず大関を陥落した正代と10勝すれば大関に戻れるのを逃した関脇・御嶽海の対戦だ。御嶽海は勝ち越せば関脇には残れたのだが、正代に負け8敗となった。この取組は御嶽海が土俵際まで正代を追い詰めたが、正代が急に目が覚めたように逆に押していき、土俵の反対側に御嶽海を押し出した。正代にはもっと早くこの根性を見せて欲しかった。

熊本県出身の正代を懸命に応援している九州の皆様は、今場所は精神的に疲れたと思う。私は東京の生まれだが、急に強くなったり弱くなったりする正代の不思議な相撲力に疲れた。御嶽海にもせめて関脇に残って欲しかった。

千秋楽に勝ち越しを目指す幕内力士は9人いる。あと一歩だ。頑張って欲しい。
 

優勝は誰の手に? しろぼしさん家のお茶碗の軍配(写真提供◎しろぼしさん)

 

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